『あじわい』No.231(2026 SUMMER)に寄稿しています
2026.07.06
掲載情報
菓子資料室 虎屋文庫では虎屋歴代の古文書や古器物に加え、菓子に関わるさまざまな資料を所蔵しています。このコーナーでは、その一部をご紹介していきます。
「桃花坊四方釜(とうかぼうしほうがま)」は字のごとく四角い(四方)茶釜で、正面に「虎屋」、裏面に「桃花坊(※1)・銕斎(てっさい)書」と鋳(い)込まれています。文字は富岡鉄斎(1836~1924)の筆によるものです。鉄斎は近代の画壇を代表する日本画家の一人で、後半生の43年間、虎屋京都店の近くに居を構えていました。当時京都店の支配人をつとめていた黒川正弘(1880~1948)と深い親交があり、その縁で虎屋は鉄斎の作品を数多く所蔵しています。
釜の制作は、千家十職(※2)の釜師大西清右衛門(13代か)です。詳しい制作年代は不明ですが、鉄斎の勢いのある文字が釜に巧みに写されており、鋳型を作る際に下図の文字を内側から押す工程などを想像すると、その技と出来栄えの素晴らしさに驚かされます。
茶事を催すことを「釜を懸ける」というように、釜は茶道具の中でも重要なもの。虎屋では今でも、「鉄斎さんの四方釜」と呼び、大切にしています。
※1 釜の銘「桃花坊」とは、平安京の頃の虎屋京都店付近を指す呼び名という。
※2 茶道の家元好みの道具を作る、千家と縁の深い十種の職人の家柄。大西清右衛門(おおにしせいえもん)は釜を作る釜師である。
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