船橋名品羊羹双録 江戸時代末期頃

菓子資料室 虎屋文庫では虎屋歴代の古文書や古器物に加え、菓子に関わるさまざまな資料を所蔵しています。このコーナーでは、その一部をご紹介していきます。

「船橋名品羊羹雙録」(36.5㎝×50㎝) *画像をご使用になりたい方は虎屋文庫までご連絡くださいませ。

年始には家族や親戚で集まり、双六(すごろく)などを楽しまれる方もいらっしゃるのではないでしょうか。そこで今回は、「船橋名品羊羹雙録」をご紹介します。

この双六は、江戸時代後期に浅草雷門で繁盛した菓子店、船橋屋織江の四谷伝馬町店が制作したものです。右側には戯作者の仮名垣魯文による口上が書かれており、その最終行に「毎年正月御歳玉として右双六奉差上候」とあることから、お正月の景品として配られたことがわかります。

ふりだしは一番下のコマで、老若男女多くの人々が、船橋屋の店頭に集まる様子が描かれています。

「ふりだし」のコマ

上り(あがり)は中央で、七福神がにこやかな表情を浮かべながらお茶を楽しんでいる様子が見えます。

中央にある「上り(あがり)」のコマ 前列左から弁財天、恵比寿、大黒天、後列は寿老人、福禄寿、毘沙門天、布袋 左上に見える「別製 金玉糖」は当時の売り出し商品か

上りを取り囲む14個のコマに書かれているのは、なんとすべて羊羹!「小倉羹(おぐらかん)」「塩蒸羹(しおむしかん)」など比較的イメージしやすい味のほか、変わり種の「山葵羹(わさびかん)」、情緒ある「東雲羹(しののめかん)」「梅が香羹(うめがかかん)」「初音羹(はつねかん)」といった名前が見えます。それぞれの羊羹にちなんだ俳句と絵も添えられています。

梅が香羹(右)は「梅一りん 一輪づつの あたたかさ」(服部嵐雪) 初音羹(左)は「鶯の身を さかさまに 初音哉」(宝井(榎本)其角)

名句や商品名が記されていることから、大人向けに宣伝を兼ねて作られたのでしょう。新春らしいおめでたい意匠や、描かれた人物の楽しそうな表情が印象的な双六です。

※羊羹は「ふりだし」から時計回りに、小倉羹、八重成羹(やえなりかん)、塩蒸羹、枸杞羹(くこかん)、梅が香羹、初音羹、東雲羹、杢目羹(もくめかん)、雹かん(あられかん)、更紗羹(さらさかん)、山吹羹、柚かん(ゆずかん)、山葵羹、難波羹(なにわかん)。

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