『あじわい』No.231(2026 SUMMER)に寄稿しています
2026.07.06
掲載情報
菓子資料室 虎屋文庫では虎屋歴代の古文書や古器物に加え、菓子に関わるさまざまな資料を所蔵しています。このコーナーでは、その一部をご紹介していきます。

左から「袖の香」「有明」「うつら餅(鶉餅)」「濱ひさし」「花たちはな」「霜はしら」
虎屋文庫は1973年に創設、2023年2月で50周年を迎えました。虎屋文庫の数ある所蔵品の中でも、菓子見本帳は特に重要な史料の一つです。
今回ご紹介する宝永4年「御菓子之畫圖(おかしのえず)」は、元禄8年(1695)の「御菓子之畫圖」に次いで古い、年紀のわかる見本帳です。採録数は162点と元禄よりも増えており、最大の特徴は材料の記載があることです。この点において、見本帳では本史料が最古と考えられています。
いくつか挙げてみると、糯米(もちごめ)や小豆、白砂糖、栗といった現在でもよく使う材料のほかに、レンコンやキクラゲのような珍しいものもあります。これらの記載は、現在の菓子との比較にとどまらず、材料が用いられはじめた時期を知る手がかりにもなります。本史料の「氷室山(ひむろやま)」は、菓子に寒天が使われた最も古い例です。

材料に、寒天、氷砂糖、クチナシとある
また、材料がわかると、食べたことがなくとも食感や味わいの想像が膨らみます。
一例として、「茄子餅(なすびもち)」を見てみましょう。当時の形状はややぽってりとして、かわいらしい印象です。うるち米の粉、小豆の粉、白砂糖と非常にシンプルな構成から、外良(ういろう)のような味わいが想像されます。絵図からも、その張りのある生地の質感や食感が伝わってくるようです。


現在の『なすび餅』 外良製 白餡黒ごま入
※なお、機関誌『和菓子』10号には「江戸時代の絵図帳・製法書に見る菓子材料」と題した論考が掲載されています。
虎屋のウェブサイト上に掲載しております内容(上記の記事内の文章を含みます)に関する著作権その他の権利は虎屋が有しており、無断に複製等行いますと著作権法違反等になります。当ウェブサイトに関する著作権等については、以下のページをご覧下さい。